"平面に貼り付けられた薄いフィルムの境界を持ち、鉛直方向に引き上げることでこのフィルムを引き剥がそうとする。そのときに剥れ際(自由境界)はどの様な挙動を取るか"と言う問題を考える。この運動を作用積分を用いて記述し、その停留点に滑らかさを仮定してこれのEuler-Lagrange方程式を解析することでこの問題にアプローチする。この問題では剥がされたテープを伝わる速度と自由境界の動く速度に差が出ることにより振動が発生することが解析的には導かれている。 現在までの解析により、一次元の場合について導かれた結果をまとめると以下のようになる。 ・大域解存在のための十分条件 持ち上げる端点から自由境界まで波が伝わるまでを仮に周期として捉え、それを帰納的に張り合わせていくことで解を延長していく。その際「引き剥がす速度が非負」である事が大域的に解が延長されていくための十分条件であることが示された。 ・時間局所的適切性 上で述べた解の構成法から初期条件・境界条件の差がどのように伝播していくかを帰納的に評価が出来る。 同時に、時間大域的に適切ではない例を構成することも出来た。 ・周期解の存在 引き剥がす速度を0とした場合、自由境界は周期的な運動をすることが証明できた。 ・漸近挙動 上で述べた周期解を元に、引き剥がす速度が0に収束した場合、自由境界は周期的な関数に収束していくことが証明できた。 また、固定領域法を応用した手法で円領域の場合についての数値計算を行った。この場合自由境界の挙動について興味深い結果を得ることが出来た。
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