研究概要 |
今年度の主な研究目的「エルゴード情報源に対する量子通信路符号化定理」の証明のために,測度論的古典系におけるShannon-McMillanの定理の証明を理解することが必要であったのでこの理解に取り組み,次に,ごく最近,ドイツ人達のグループによって証明された,エルゴード量子格子系に対するShannon-McMillanの定理The Shannon-McMillan Theorem for Ergodic Quantum Lattice System (I.Bjelakovic et al.)を精読した.上記の論文におけるチャネルは量子状態の入力,量子状態の出力を考えたものであり数学的解析と情報理論的意味付けが難しいものである.その後,この入力情報源の条件「エルゴード性」を取り除いたものなどを考える必要があると思われるが,そこまで進んでいない.また,これの設定での通信路符号化定理の証明が完成すれば当該分野にとって大きな発展であり,同研究者にとってはビッグサプライズとなるが,これも解決していない.従って,これとは独立して入力状態に古典系,出力状態に量子系を想定した,いわゆる古典-量子チャネルに関する研究を行った.そのなかの主な問題の1つに,古典-量子チャネルの信頼性関数の凹性の証明がホレボーによってオープン問題として提出されている: A.S.Holevo, "Reliability function of general classical-quantum channel",IEEE,Vol.46,pp.2256-2261(2000) そして,2002年にこの問題の十分条件を導き出し,2003年に部分的解決にまで至った.その結果については現在取りまとめ中である.
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