『時間周期的に変動する一様電場内での多体量子力学系に対する長距離型散乱の研究』 標記の研究において、最初にしなければならない重要な場合分けがある。一つは電場の時間平均が零である場合で、もう一つはその平均が零でない場合である。今年度の研究は後者についてのものである。先行する研究として、2001年の私自信の仕事(Funkcialaj Ekvacioj 44(2001).335 376)である。そこで課した粒子間の相互作用に対する仮定は、比電荷(質量と電荷の比)が異なっている粒子同士の相互作用はStark効果のある場合の短距離型であるとし、比電荷が同じ粒子同士の相互作用は、電磁場のない多体Sehrodinger作用素に対する散乱理論で漸近完全性が保証されているのと同じクラスにあれば、短距離型でも長距離型でも構わないとするものであった。この仮定の下で、(修正)波動作用素の存在とその漸近完全性を証明した。 上記の研究で比電荷が異なる場合にのみ短距離型の制限が付いたのは、外場の影響が現われるのは比電荷が異なる粒子間の相互作用のみであることと関係している。時間周期的変動ポテンシャルを持つSchrodinger作用素に対する散乱理論では、エネルギー保存則の破れにより長距離型ポテンシャルの取り扱いが容易ではない。その困難を回避する方策を模索し、今年度の研究では、比電荷の異なる二粒子間の相互作用ポテンシャルV_<jk>(x)が|∂^α_xV_<jk>(x)|【less than or equal】C_α<x>^<-(p+|α|)>を0<p【less than or equal】1/2なるpに対して満たし((長距離型)、比電荷の同じ粒子間の相互作用は上記の研究と同じ仮定を満たしているとき、有効な修正波動作用素を導入し、その存在と漸近完全性を証明した。 以上の結果について、学術論文による今年度中の発表はできなかったが、2003年10月にシンポジウムでの口頭発表を行った。現在学術論文による発表の準備をしている。
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