研究概要 |
本研究の目的は,主要部が非線形の微分作用素である2階および高階の非線形微分方程式ならびに関連する関数微分方程式の振動性と漸近挙動の精密な解析とそれに基づく解の全体構造の解明を目指す研究を行うことである.本年度は,単独の2階ならびに高階の非線形微分方程式に対して,"非振動解の無限遠点における漸近行動の精密な分析","全ての解が振動あるいは非振動である状況の特徴づけ"などを重点課題として研究を行った. [研究実施の具体的内容] 1.微分方程式の解の性質の研究においては,有効な数学的手段・技法の効果的な適用が一義的に重要である.そこで,文献の収集やインターネット(MathSciNet等)の活用を通して必要な情報を蓄積して,それを的確に総括,整理し,問題の解決に有効な方法や技法(解析的,位相的,幾何学的)を網羅する作業を行い,自らの手で新たな方法論を開発し計算を実行した.さらに,無限区間における大域的挙動(振動性と無限遠点における漸近挙動)を推測するために,計算ソフトMATLABを援用した. 2.研究経過を定期的に振動理論の世界的権威である草野尚教授(福岡大学)に報告して批判と助言を求めた. 3.4階非線形微分方程式の振動理論の研究に功績がある呉奮韜副教授(中国)と討論,情報交換を行った. [研究成果] 1.Karamata(ユーゴスラビア)によって創造された正則変動関数論(Theory of regular variation)の枠組みの中で,2階非線形微分方程式の解の漸近挙動を解析することを試み,2つの解がある種の正則変動関数のクラスに属するための必要十分条件を求めた. 2.4階のずれの変数を含む関数微分方程式の解の振動性を対応する4階常微分方程式の振動性に対比させて研究した. 3.高階のSturm-Liouville微分作用素を含む非線形微分方程式の非振動解を無限遠点における漸近挙動に従って分類し,その分類にリストされた各タイプの解が存在するための条件を求めた.
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