シュレディンガー発展方程式は、非相対論的量子力学において粒子の運動を記述する基礎方程式であり、その基本解の特異性の解析およびパラメトリックス・基本解の構成は基本的な問題である。本研究の目的は、完備リーマン計量に付随した主要部を持つシュレディンガー発展方程式の解の構造を、その表象から定まる様々なハミルトン流(特に測地流)の大域的挙動との関連で明らかにすることである。本年度の研究実績は次の2つにまとめられる。 (i)無限遠方の近くで性質の良い強凸関数を有し、ある種の評価を満たすようなユークリッド空間上のリーマン計量を考え、それに付随するラプラス作用素を主要部とし、順に高々1次・2次の増大度を持つ磁場ポテンシャル・電場ポテンシャルを持つシュレディンガー発展方程式の解の構造を研究した。そして入射領域で減衰している初期値に対するシュレディンガー方程式の解の超局所的滑らかさは、測地流によって負の方向に捕捉されない点で、ある時間正の区間上、初期値の減衰度に比例して増大することを証明した。増大するポテンシャルを摂動項とみなすことを主方法とするためエルミート行列ポテンシャルにも適用できる。 (ii)摂動された調和振動子に対する発展方程式の解の特異性の構造を研究した。そして等方的調和振動子に対して、摂動ポテンシャルが1次の増大度を持つとき共鳴時間において特異性の伝播が起こることを解明した。また有理数的に振動数が関係している非等方的調和振動子に対して、最も強い特異性は共鳴時間において伝播し、より弱い特異性はたとえ摂動ポテンシャルがコンパクト台を持つ場合でも共鳴時間に新しい特異性を生成することを示した。
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