シュレディンガー発展方程式は電磁場中の粒子の非相対論的運動を記述する基礎方程式であり、その解作用素の写像性質・解の特異性の構造を解析することは基本的な問題である。本年度も昨年度に引き続き、シュレディンガー作用素の副主表象が解の特異性に及ぼす影響を解明することを目指し、そのモデルとして実2次多項式のポテンシャルを持つシュレディンガー作用素に摂動ポテンシャルを加えたものを取り上げ、その解の特異性の構造変化を研究した。そして摂動ポテンシャルの増大度が丁度1次の場合に、適当な付加条件のもとで、摂動ポテンシャルにより解の強い特異性が有限伝播することを証明した。またすべてのオーダーの特異性が有限伝播するような、解の特異性の方向を決定した。一般に弱い特異性は有限伝播せず、たとえ摂動ポテンシャルがコンパクト台をもつ滑らかな関数であっても、非等方的振動と摂動ポテンシャルとの相互作用により、超平面に沿って新たな弱い特異性が生じる場合があることがわかっている。そこで新たに生成される弱い特異性の現れる場所を上からの評価する方法を考察し、解の特異性の方向ごとに相空間を粗くして考えることにより、弱い特異性の粗い意味での有限伝播が成り立つことを示した。この上からの評価を精密化し、また弱い特異性の構造を解析することは今後の課題である。
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