この研究では、宇宙論的密度揺らぎから重力クラスタリングの結果できるダークマターハローおよびサブハローがどのような構造を持つかを、重力多体シミュレーションで明らかにすることを目的としている。この研究においては、シミュレーションの空間分解能、質量分解能の向上がブレークスルーをもたらすと考えている。そのためにクラスター構成の重力多体シミュレーション専用計算機GRAPE(以下GRAPEクラネタ)を開発し、大輝模なシミュレーションを行なう。研究実績は以下の2点にまとめられる。 1.開発したGRAPEクラスタでダークマターハローの構造を調べた。これまでのシミュレーションより1桁近く分解能をあげた銀河団スケールでのダークマターハロー形成のN体シミュレーションを行なった。その結果、概ね1%ビリアル半径(約20kpc程度)より内側では、密度のべきはこれまで考えられていた-1.5乗のカスプよりわずかながら浅い方にずれることがわかった。そのずれ方はハロー毎に異なる。すなわち、Universalな構造をもたないということを意味する。1%ビリアル半径より外側では、Moore et al.(1999)のプロファイルに良く合うことを確認した。この1%ビリアル半径はこれまでのシミュレーションの分解能の限界にあたる。この成果はAstroPhysical Jounal誌2004 May 10号にて出版予定である。なお、行なわれた計算(3千万体)は単独天体のN体シミュレーションとしては現在世界最大である。 2.シミュレーションを行なうために大規模なGRAPEクラメタの開発をすすめた。開発したクラスタの基本構成はGRAPE-6Aカードとホストコンピュータからなる。現在、クラスタは32ノードからなり、そのうちの12ノードで上記のシミュレーションを5日程度で終らせることができるとともに、さらに大規模な計算も可能である。
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