星形成コアの分子組成進化に関する理論的および観測的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14740130
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 相川 祐理 神戸大学, 理学部, 助手 (40324909)
• キーワード: 星形成 / 星間化学 / 星間物質 / 電波天文学

研究概要

(1)星は分子雲コアの重力収縮によって生まれる。収縮とともにガス密度は上昇するが、コアが光学的に薄い初期段階では温度は低温のままである。このような"星なしコア"における分子組成進化をダスト表面反応も含めた詳細な化学反応ネットワークを用いて数値計算によって調べた。得られた結果は以下の通りである。
・一酸化炭素など重元素でできた分子の多くは星間ダストの表面に吸着され気相から抜けてしまう。更にダスト表面では吸着された分子・原子同士が化学反応を起こす。ダスト表面反応は、吸着分子の組成を大きく変えるだけでなく、窒素系分子や前期型分子などの気相組成にも大きな影響を与える。
・モデル計算の結果は観測されている星なしコアの分子組成をよく再現する。
・コア毎の組成の違いは、磁場などの影響による収縮速度の違いや進化段階を反映していると考えられる。
・分子の水素/重水素比はコアの進化とともに上昇し、特にH_2D^+は中心部で最も主要なイオンとなる。このイオンは最近観測され、モデルでの予測と近い存在度が得られた。これら結果はすでに国際学会で口頭発表し、現在学術雑誌に投稿中である。
(2)星形成コアのガスやダストの一部は角運動量を持っているため直接星には落ちず、星周円盤をつくる。この円盤は惑星系の母胎であり、星形成だけでなく惑星系形成にとっても重要な天体である。私は円盤の分子組成を数値計算によって求めた。その結果、分子組成は紫外線強度や温度に強く依存するので円盤内で不均一な分布をしていること、組成分布を正しく求めるには円盤内での紫外線輻射強度分布の見積もりが重要であることを明かにした。
(3)LkCa15の干渉計観測を行い、星周円盤内のホルムアルデヒドガスを検出した。
上記(2)(3)についてはすでに論文としてまとめ、学術雑誌に掲載された。

研究成果

• [文献書誌] van Zadelhoff, G-J., Aikawa, Y., Hogerheijde, M.R., van Dishoeck, E.F.: "Axi-symmetric models of ultraviolet radiative transfer with applications to circumstellar disk chemistry"Astronomy & Astrophysics. 397. 789-802 (2003)
• [文献書誌] Aikawa, Y., Momose, M., Thi, W.F., van Zadelhoff, G-J., Qi, C., Blake, G.A., van Dishoeck, E.F.: "Interferometric Observations of Formaldehyde in the Protoplanetary Disk around LkCa15"Publication of Astronomical Society of Japan. 55. 11-15 (2003)
• [文献書誌] Aikawa, Y., van Zadelhoff, G-J., van Dishoeck, E.F.: "Chemical Models of Star-forming Cores and Protoplanetary Disks"Proceedings of Chemistry as a Diagnostic of Star Formation" held at University of Waterloo, Ontario, Canada. (in press). (2003)
• [文献書誌] Aikawa, Y.: "Chemistry in Prestellar Cores : Can we distinguish cores with and without magnetic support via chemistry ?"Proceedings of Chemistry as a Diagnostic of Star Formation" held at University of Waterloo, Ontario, Canada. (in press). (2003)