平成14年度は、銀河・銀河団の多波長観測を利用した宇宙論についての研究を主に行った。まず、銀河・銀河団の形成、進化をモデル化するために不可欠な、ダークマターハローの成長を、密度ゆらぎの初期分布をもとに、モンテカルロシミュレーションによって再現する方法とその信頼性について詳細に考察した。また、X線領域で観測されている、銀河団の光度-温度関係および温度関数から、銀河団の温度-質量の相関関係に与えられる制限を導いた。この結果得られた制限は、実際の観測を良く再現するものの、銀河団の最も単純な理論モデルとは矛盾することがわかった。さらに、銀河団中心部でのガス温度の振舞いを理論的に解明するための数値計算コードの開発を進めた。 また、電波領域における野辺山45m望遠鏡を用いた銀河団観測提案が採択され、12月〜3月に観測を行った。その結果は現在データ解析中である。また、アメリカのX線衛星Chandra、日本の赤外線衛星Astro-F(2004年打ち上げ予定)等にも銀河・銀河団の観測提案を行った。これらの観測提案が採択されれば、1、2年のうちに観測が実施される見込みである。
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