恒星の過半数は連星で、恒星が誕生した時点で既に連星系を形成している。連星系形成の典型的なシナリオによると、分子雲コアが重力収縮する過程で、分裂し、それぞれの分裂片が質量降着して、連星系が形成すると考えられている。分子雲コアの重力収縮と分裂の問題は、ダイナミカルな現象なので、数値シミュレーションを用いた研究が必須である。ところが、分子雲コアの大きさは0.1pc程度もあり、分裂片の大きさは数AU程度しかない。したがって、分子雲コアの重力収縮と分裂を数値シミュレーションで計算するためには、非常に大きなダイナミックレンジが必要となる. そこで、大きなダイナミックレンジを得るため本研究では、多層格子法を用いた数値シミュレーションコードを開発した。多層格子法は、セルの大きさが異なる格子を入れ子状に配置し、広い領域を粗い格子で覆い、興味ある狭い領域を細かい格子で覆う。これにより、比較的少ない格子で大きなダイナミックレンジが得られる。 我々が開発した多層格子法の特徴は数値流速が保存することである。最大の特徴は自己重力の解法である。自己重力コードでは、マルチグリッド法を多層格子法に拡張した。従来、流体の数値流速の保存に関しては注意されてきたが、我々の方法は自己重力の数値流速も保存する。これはガウスの法則を満たすことに対応する。また、計算時間が全セル数に比例する高速な方法である。このスキームについて、論文を執筆し、掲載された。 また、この数値シミュレーションコードを用いて、連星系形成の数値シミュレーションを行いった。その結果を論文に投稿中である。
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