研究概要 |
米国サクラメントピーク天文台にてAdvanced Stokes Polarimeter(ASP)を用いた観測を平成15年3月に実施し、科学衛星「TRACE」および「SOHO」と共同で、太陽面上の同じ観測領域の同時観測を行った。ASPによって高精度の偏光ストークスデータを取得し、このデータから太陽表面(光球)の磁場ベクトルを解析的に求める。衛星は、コロナ起源の高温輝線を用いた撮像観測および、光球磁場の視線方向成分を高い時間分解能で取得することに成功した。この共同観測の実施のために、平成14年7月に米国スミソニアン天文台を訪問し打ち合わせを実施した。磁場の浮上活動を伴う活動領域および磁場が徐々に崩壊していく先行黒点など、様々な磁場とプラズマのカップリング現象を同時観測することに成功し、今後のデータ解析の結果が待たれる。 2000年11月に取得した観測データのまとめを行い、浮上磁場領域の磁場ベクトルに関する学術論文をThe Astrophysical Journal誌に投稿し現在審査中である(Kubo, Shimizu & Lites)。浮上磁場領域のグローバルな磁気的特長を再確認した点に加え、浮上したて(数時間以内)の磁場領域を特定し磁気的特長の詳細を決定した。特に、浮上したての磁場は、太陽面に水平で弱く、フィルファクタ(磁場のつまり具合)が1に近いことを世界で初めて発見した。 コロナで起きるマイクロフレアに関連した磁気活動の同定に関する研究結果が、Astrophysical Journal誌に掲載された(Shimizu et al. 2002)。マイクロフレアの発生には浮上する磁場が重要な役割を果たしていることを観測的に明確に示した論文である。なお、これまで行ってきた一連のマイクロフレアの研究で、COSPAR/ロシア科学アカデミーからゼルドビッチメダルを平成14年10月に受賞した。 平成14年7月の米国渡米の際には、現在開発中のSolar-B衛星に搭載される観測望遠鏡から取得されるデータの解析についての打ち合わせも米国研究者と行い、解析の枠組みを確立させた。
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