太陽活動領域上コロナ大気で起きている活動・加熱の理解を目指して、Advanced Stokes Polarimeter (ASP、米国サクラメントピーク天文台)による偏光スペクトル観測やSolar Universal Polarimeter (SOUP、スペイン・スエーデン王立天文台)による視線方向マグネトグラムの連続観測のデータを、科学衛星「TRACE」/「SOHO」で観測した上空の高温コロナの撮像データとを相互解析を行った。 ASPの偏光スベクトル観測を平成15年3月など今まで3回実施し、磁気浮上活動や磁気キャンセレーションなどの3次元磁場ベクトルの変化を上空のコロナ活動・加熱とともに捉えることに成功した。ASPは630nmにあるZeeman効果を示すFe吸収線の高分散スペクトルをStokesベクトルと呼ばれる偏光状態で高精度に測定する装置であり、吸収線輪郭の詳細解析から、太陽面(光球)磁場ベクトルや視線方向速度場を精度良く決定することが可能である。また、1998年に取得されたSOUPとTRACEの同時観測データの解析を行った。このデータは米国研究者が取得したデータで、約6時間にわたってサブ秒角の解像度で取得された今までにない分解能的に質が高いデータである。これらの解析を通して、コロナ活動と浮上活動に関して下記の知見を得た。 1、異なる2つの磁気要素群が衝突する際の磁場ベクトルの変遷が明らかとなった。衝突現象は磁気キャンセレーションと呼ばれ、正負の磁極が徐々に消滅する過程で平行の磁力線が生成されることが明かされた。 2、マイクロフレア活動には、大きさが5-7秒角(3000-5000km)と小規模な磁気浮上が伴う。コロナ活動は浮上活動の後に約30分発生している。 これらの研究成果を含め、コロナ活動と磁気活動に関する成果レビューをIAUシンポジウムNo.223(ロシア・サンクトペトロブルグ)にて招待講演として行った。 ASPおよびSOUPは共に海外の研究機関で開発され一般に供された装置であるが、さらに性能が向上した装置が2006年に打ち上げ予定の日本のSolar-B衛星に搭載される可視光望遠鏡の焦点面検出装置として実現される。地球大気揺らぎの影響のない宇宙空間から8ヶ月連続的に観測ができる予定であり、この観測・研究計画の検討のために本年度の研究成果は役に立った(Shimizu 2004)。
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