本研究は、中性炭素原子のサブミリ波(492GHz;波長0.6mm)の輝線を、銀河面に対してサーベイしてその全容を明らかにし、他波長のサーベイデータと比較することにある。炭素は、宇宙において水素、ヘリウム、酸素についで4番目に存在量が豊富な元素である。そしてその形態に着目すると、星間物質がやがて星を形成する過程で、炭素原子、一酸化炭素分子と変化していく。一酸化炭素分子の銀河面における分布はこれまでよく調べられているので、それに対応する炭素原子の分布を明らかにするのが最終的な目的となる。 そこで、私は、東大のグループと共同で、上記を目的とした可搬型の口径18cmサブミリ波望遠鏡の開発を行ってきた。その中で特に本研究においては、サーベイ運用のために重要となる安定したデータ積分系の開発を行った。これまでは手作りの回路による試験的なものを用いていおり、その読み出しノイズが大きいことが判明していた。そこで、本年度はその回路[分光計で使用しているCCD (Thomson社製TH7811A)のドライブ回路、CCDからの1次元データ(周波数)のA/D変換回路ならびに積分回路、そしてメモリへの転送回路]を一枚の基板に起こした。 上記を2002年、7月までに終了し、その後、基板をおさめる筐体、電源回路ならびにGPIBインターフェースの作成を行った。その後、実際の分光計(AOS)からのCCD出力を入力し、その動作確認テストを行った。その結果、デジタル回路において、データ取り込みのタイミングパルスがうまく整形できず、取り込みがうまくいかないことが判明した。しかし、その原因を解明する時間がないまま、昨年度9月、南半球チリ(アタカマ高地、標高5000m)における望遠鏡運用が始まり、本積分機をチリにもちこみ運用することはできなかった。(運用は、以前製作した手製の積分機で行った。) その後、実験室において上記の問題の解明をしたところ、タイミングパルス形成にもちいているICチップの一部に不具合があったことが、判明し、現在は正常な動作が確認されている。現在、その性能評価を進めている。そして、来年度のチリにおける望遠鏡運用において用いることを予定している。
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