昨年度(2002-2003年)までに南米チリ、アタカマ高地で運用してきた、口径18cmサブミリ波望遠鏡のシステムの改良を行った。具体的には、データ積分系の低ノイズ化と、システムの安定化をはかるために、これまで手作りであったデータ積分機を、改良のうえプリント基板におこした。そしてソフトウェアの改良などを加え、2台の分光計から同時にデータ取得が可能で、さらにOn The Fly Mapping Mode(OTF)に対応した観測システムを構築した。これらの試験を十分行った後、望遠鏡を南米チリのアタカマ高地に持ち込んた。、 アタカマ高地においては、望遠鏡が小口径であることを生かして、南半球からのみ観測可能な銀河面に対して、中性炭素原子CI492Ghz輝線のサーベイ観測を行うことが目的である。これまで、銀河面規模においては星間物資の分子相をトレースする一酸化炭素分子(CO)のサーベイ観測は行われているが、対応する原子相である中性炭素の分布についてはほとんど調べられていなかった。そこで、本望遠鏡を用いて、世界に先駆けてその広域分布を調べるのが狙いである。 チリにおいては、東大と、国立天文台のグループの協力により、銀河面上の60点(一度おき)に対してCI492Ghz輝線のスペクトルを得ることができた。その結果、その放射領域は銀河面規模において、分子雲(CO)と一致することが初めて明らかになった。この結果より、原子相は、"分子相が星間紫外線によって破壊された結果存在している"という従来考えられていた効果とは別の機構がその存在量を決定している可能性が示唆された。 現在、より効率的なサーベイに適した遠隔制御や、運用の安定化のため、制御システムをこれまでのWindowsベースにしたものから、VME-TBusと、Solarisをベースにしたものへ移行するための開発、改良を行っている。
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