今年度は、超対称標準模型における量子補正に関して、以下の研究結果を得た。 1、bクォークのphotonやgluonへのradiative decaysへの、2ループ超対称QCD補正を、パラメーターtanβが大きいモデルに対して分析した。このモデルでは、荷電ヒッグス粒子やチャージーノの寄与は、大きな超対称QCD補正を受けることが知られている。しかし、Wボソンの寄与に対する補正は、超対称粒子の質量が大きくなるにつれて急速に消えるため、従来の解析では無視されてきた。そこで、超対称粒子が比較的軽い場合に、この補正を2ループグラフの厳密な計算によって評価した。スクォークやグルイーノの質量が200-300GeVであり、スクォークの世代間混含が無視できるような、あるパラメーターの選択に対しては、photonへの崩壊に対する補正はごく小さいが、gluonへの崩壊に対しては、25%になりうることがわかった。しかし一般には、ループによって生成されるスクォークの世代間混合の寄与を加えないと、紫外発散のない閉じた結果が得られないことがわかった。 2、将来の加速器実験では、超対称粒子が大量に生成され、それらの質量が高い精度で測定されることが期待される。それらの測定値から、超対称性をソフトに破るパラメーターの値を求める際に、場合によっては1ループを越えた量子補正が必要となることが予想される。そこで、その一例として、グルイーノの物理的質量とrunning massの差を、QCDの2ループの次数で計算した。gluonによる質量への2ループ補正は約3%となり、将来期待される質量測定の精度よりも有意に大きいことが示された。
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