私の今年度の研究成果は1、QCDポテンシャルをOperator Product Expansion (OPE)で解析し、Wilson係数がクーロンポテンシャルと線形ポテンシャルの和で表せることを示したこと 2、OPEを用いてQCDポテンシャルに対する非摂動効果を定量的に求めたこと 3、静的なクォーク・反クォーク対のまわりのグルーオン配位を計算したことが主なものである。1においては、QCDポテンシャルのOPEにおいて適切な繰り込み処方を与え、そのもとで、Wilson係数が「クーロン+リニア型」と表されること、そしてその形が、昨年度私が、QCDポテンシャルの摂動展開の高次の漸近形から抽出した「クーロン+リニア型」ポテンシャルと一致することを示した。これによって、昨年度得られた結果に、より強固な理論的基盤が与えられた。2においては、OPEの理論的予言を詳細に調べ、その結果を反映させることによって、従来よりも精度よく非摂動効果を決めることができた。3においては、rがハドロンスケールに比べて小さい領域で、どのようなエネルギー密度分布がリニアポテンシャルの起源となっているのかを明らかにした。これはまったく新しい結果で、独創的であると考える。 また、これまでの研究成果は、国際的なクォーコニウム・ワーキンググループ(世界数十カ国から総勢100名以上)の活動に対する重要な貢献をなし、成果報告書(CERN Yellow Report :一部を私が執筆)に含まれている。 これまで3年間の研究成果により、表題の「重いクォーコニウム系の物理量の精密計算と新しい理論的枠組の構成」について、特にスペクトルとQCDポテンシャルに関する部分を中心に、定量的にも定性的にも、非常に理解を進めることができた。この結果は今後長くに渡って受け継がれ、役に立つと考える。
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