研究概要 |
今年度は、昨年度終わりに取得した炭素標的による中性K中間子光生成反応のデータ解析とここ数年開発を進めて完成した液体重水素標的を用いた中性K中間子光生成反応データの取得を9月から12月にかけて行った。 炭素標的データは、7月に仙台で行われた国際会議(SENDAI03)で解析の途中結果を発表した。また、10月に米国で行われた国際会議(HYP03)では、実験グループメンバーが解析結果を発表した。 炭素標的データでは、約600個の中性K中間子の生成が同定でき、その角度および運動量分布を求めた。このデータは、最新の理論モデルが予言する素過程反応の断面積を仮定した準自由生成反応を考慮した計算で説明できた。また、以前に測定された炭素標的からの荷電K中間子生成データとほぼ同じ大きさの断面積を得た。このデータは、電磁相互作用によるストレンジネス生成反応の理論モデルを改良するために重要となるn(γ,K^0)Λ反応の情報を与える初めての測定である。現在、解析の最終的な詰めを行っており、投稿論文を準備中である。 重水素データの取得および解析も順調に進んでおり、これまで取得したデータでは、およそ300個の中性K中間子の生成を同定できた。さらに統計量を増やすため、来年度にもデータ取得を行う予定である。重陽子標的データでは、原子核に束縛された中性子標的の取扱いの曖昧さが炭素標的に比べて少なく、より直接的なn(γ,K^0)Λ反応の情報が得られることを期待している。
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