鉛208核のM1励起の強度分布は、1粒子1空孔状態に残留相互作用が働くことにより多粒子多空孔状態として分散するということで理論的に説明されているが、その強度分布について統一的に測定された例はない。 我々の開発した陽子非弾性散乱の0度測定という画期的な測定手法を用いることにより、その励起構造を詳細にわたり引き出すことを計画している。この測定のためには、0度付近での散乱角を測定するためのアクティブコリメータ装置が必須である。この装置を開発することが、本研究の目的である。 本年度は ・装置の具体的な設計作業およびシミュレーション ・既存の装置を用いた性能の評価 を行った。 従来型のドリフト型検出器を用いることにより、散乱粒子の位置分解能すなわち散乱角度分解能を0.05度程度にまで高め、読み出しワイヤーの本数を減らすことが可能であるが、1mm^2あたり10^4粒子/secと見積もられるバックグラウンドイベントの量に対応することが困難であることがシミュレーションの結果から示された。また、同様の結果が、装置を実際に使用した試験によっても確かめられた。 このため、ワイヤー間隔を密にした構造の比例計数管検出器を用いることにより、散乱角度分解能は犠牲にする(0.3度程度)が、高頻度のバックグラウンドに耐えることのできる構造をとる方針を定め、具体的な構造の設計とシミュレーションを行った。 散乱角度分解能、バックグラウンド耐性ともに、本来の実験目的に耐えうるものであることがシミュレーションにより示されたため、装置を実際に製作するための材料および部品の準備を行った。この後、実際の製作に入る予定である。
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