研究概要 |
本研究では低エネルギー(核子あたり5MeV付近)不安定核ビームの生成技術を確立し、それを用いて不安定核の共鳴準位の性質を測定し、不安定核の構造や宇宙の元素合成過程についての知見を得ることをめざしている。本年度は東京大学原子核科学研究センターの低エネルギー不安定核ビーム分離器CRIBを用いて核子あたり約4MeV、強度が10^<3〜4>個/秒程度の不安定核ビーム^<22>Mg,および^<21>Naの生成に成功した。これらの2次ビーム核種はサイクロトロンにより加速された1次ビーム^<20>Neを^3Heガス標的に照射しそれぞれ、逆運動学の(^3He,n)および(^3He,n+p)反応を用いて生成された。次に、不安定核ビームと陽子標的を用いた共鳴弾性散乱実験のための反跳陽子検出システムを製作した。検出システムは数個の2次元位置感応型の半導体(シリコン)検出器およびアンプ回路からなり、反跳陽子のエネルギーと散乱角度の測定ができる。この検出器を使用して、共鳴弾性散乱^<22>Mg+pおよび^<21>Na+pの測定が行われ、そのデータ解析を現在進めている。次に、すでにCRIBを用いて測定された共鳴弾性散乱^<11>C+p→^<12>N^*→^<11>C+pのデータ解析を行い、天体における陽子放射捕獲反応^<11>C(p,γ)^<12>Nに寄与しうる^<12>N^*共鳴状態のエネルギー、巾、スピン・パリティーの決定を行った。この^<11>C(p,γ)^<12>N反応は、初期宇宙に存在した軽元素から炭素以上の重元素を合成する過程ホットpp-チェーンの重要反応であると考えられている。反跳陽子のエネルギースペクトルのパターンにより^<11>C+p分離エネルギー近傍にある^<12>N^*共鳴状態が識別され、励起エネルギー3.13と3.56MeVにある共鳴のスピン・パリティーはそれぞれ3^-および(2)^+と新たに決定された。その結果、スピン・パリティーの選択性により^<12>N^*(3.13MeV)を経由する^<11>C(p,γ)^<12>N反応は起こりづらいことが判明した。
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