研究概要 |
本研究では核子あたり5MeV付近の低エネルギー不安定核ビームの生成技術を確立し、それを用いて不安定核の共鳴準位の性質を測定し、不安定核の構造や宇宙の元素合成過程についての知見を得ることをめざしている。本年度は東京大学原子核科学研究センターの低エネルギー不安定核ビーム分離器CRIBを用いて核子あたり約4MeV、強度が10^<3〜4>個/秒程度の不安定核ビーム^<23>Mg,^<25>A1,および^<26>Siの生成に成功した。これらの2次ビーム核種はサイクロトロンにより加速された1次ビーム<24>Mgから、それぞれ、逆運動学の^<24>Mg(d, t)^<23>Mg,^<24>Mg(^3He, np)^<25>Alおよび^<24>Mg(^3He, n)^<26>Si反応を用いて生成された。これにより我々がこれまでに開発した不安定核ビーム核種は10数種類に達した。これらの低エネルギー不安定核ビームを陽子標的に照射して、共鳴弾性散乱^<23>Mg+p,^<25>Al+pおよび^<26>Si+pの測定が行われた。それらに現れる共鳴準位のデータは不安定核の構造および天体における爆発的水素燃焼過程の理解に基礎的な情報となる。^<23>Mg+p散乱の予備的な解析の結果、いくつかの^<24>Al共鳴状態を同定することができた。今後それらについてエネルギー、巾、スピン・パリティーが新たに決定される予定である。実験技術面の進歩としては、反跳陽子検出器を増設したことにより、散乱角度範囲を広くカバーすることができ、複数の異なる角度での陽子スペクトルを比較するなど、より高度な解析ができるようになった。これは共鳴準位の同定に有用である。また、本実験手法をテストするために、安定核^<24>Mgビームを使用して、よく知られている^<24>Mg+p共鳴の測定を行った。その結果、測定器システムの有用性と解析手法の確かさが実証された。
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