研究課題
本年度は、前年度に引き続き、理論モデルの妥当性を検証するため、数値シミュレーションを用いた定量的比較を行ってきた。主な成果としては、(1).楕円体モデルに基づく暗黒物質分布に対する質量密度分布関数の定量的検証(2).長時間進化における自己重力天体の準平衡状態の動力学的記述が挙げられる。この中で(1)の項目では、暗黒物質分布の一点分布関数と呼ばれる統計量に対し、楕円体モデルを用いて、非摂動的な理論予言を与えるモデルを構築、N体シミュレーションとの比較を行った。前年度の研究成果を下に、さらに観測的効果である、スムージングの系統的な影響を理論計算で取り入れ比較を行ったところ、冷たい暗黒物質モデルのような初期条件では、非線形性がかなり強い領域でも、シミュレーション結果とよい一致を示すことが明らかになった(11.研究発表の雑誌論文[1])。一方、(2)では、自己重力天体の長時間進化に現れる準平衡状態の動力学的記述について、N体シミュレーション、自己重力系のFokker-Planckモデルを用いて、比較検討を行った(11.研究発表の雑誌論文[2][3])。その結果、2体緩和のタイムスケールでじわじわ変化する領域では、N体・Fokker-Planckモデルとも、恒星ポリトロープ分布と呼ばれる平衡形状の系列で統一的に記述でき、両者の方法で得られた結果はよく一致することがわかった。Fokker-Planckモデルは、解析的に取り扱いやすい動力学的モデルであり、準平衡状態のタイムスケールや、非平衡進化のトラック、などといった性質を解析的に理解する上で有用であると考えられる。その意味で、(2)で得られた成果は、今後、解析的な理解を推し進める上で重要といえる。その他、本年度では、将来の重力波検出器で検出されるであろう宇宙背景重力波の起源とその同定について、本研究課題を通して得られた成果を下に、予備的研究を行った(11.研究発表の雑誌論文[4][5])。
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