本年度はN-fold supersymmetryの多体系への拡張について詳しく検討を行い、N-fold supersymmetryを多体系に拡張する際の問題点を明らかにした。それは、N-fold supersymmetryを多体系に一般にフェルミオンの自由度とボソンの自由度がN-fold supersymmetryでは1対1対応しない事である。そこで、通常のフェルミオンの代わりに、パラフェルミオンを導入するなど1対1対応させる為のいくつかの試みを行った。 また、関連して以下の研究も行った。超対称性とは、ボソンとフェルミオンという統計性の異なる粒子間に成り立つ対称性であるが、空間が2次元である理論では、その他の統計性が成り立つ可能性がある。特に粒子の交換オペレーターが行列の形であるものは、非可換統計と呼ばれている。私は、Axion stringと呼ばれるソリトンがマヨラナフェルミオンと結合すると非可換統計を示す事を発見した。この結果は論文にまとめ、Physics Letter Bに発表した。マヨラナフェルミオンとソリトンが結合して新しい統計性が現れる事は、Axion stringに限ったことではなく、その他のソリトンでも起こりうることである。その可能性についても考察を行った。 また、超伝導相のトポロジーについても研究を行った。最近の新しい実験技術により、超伝導相のノードの構造が詳しく調べられるようになっており、通常の物質と超伝導相とノード構造が全く異なる物質が見つかって来ている。また、ノードの構造が変わるような超伝導相自体の相転移も発見されている。私は、超伝導相のノードの構造をホモトピーを用いて分類し、超伝導相の相転移をトポロジーチェンジとしてとらえる理論を構築した。この研究については現在論文執筆中であり、近々発表の予定である。
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