研究概要 |
新しい核種や元素の存在を明らかにすることは,原子核が存在し得る限界領域の確認や,不安定領域下での核的特性の検証などについて,新しい知見をもたらしてくれる.とりわけ,中性子不足の軽アクチノイド核種領域には,現在までその存在が確認されていない核種群や,その存在が確認されていても壊変特性が未解明のために正式な核情報を提供できない核種が,数多く残されている.また,この領域のα壊変特性についての情報は,原子核質量を決定する上で重要であるが,現在全く得られていないのが現状である. そこで,本年度の研究実績として,高効率α検出器チェンバーの開発状況と中性子不足の軽アクチノイド核種領域に位置する未知核種^<241>Bkの探索結果について報告する.さきに提出した研究計画予定(全3ヵ年の1年目)に従って,高効率のα検出器チェンバーの設計ならびに組立てと,高エネルギー分解能のシリコン検出器の購入した.そして,そのチェンバー内へのシリコン検出器の組み込み作業とテスト実験を行い,ほぼ問題なくそれら装置が動作することを確認した.今後,オンライン実験での使用は,日本原子力研究所タンデム加速器のマシンタイムスケジュールにあわせて,次年度以降に行なう予定である.これと並行して,新核種^<241>Bkの電子捕獲壊変の観測より,その同定実験した.この実験は,日本原子力研究所タンデム加速器棟R2コース内で実施した.ターゲットには,^<239>Pu(計21枚,1枚あたり約100μg/cm^2)を,入射イオンビームには,^6Li(入射エネルギー:45.5MeV)を使用した.さらに,核反応生成物の搬送とその質量分離には,PbI_2エアロゾルクラスターのヘリウムガスジェットシステムと日本原子力研究所オンライン同位体質量分離器(JAERI-ISOL)を使用した.今回のオンライン実験でのスケジュールは,3日を要した.その結果,^<241>Bkの電子捕獲壊変に伴うCm Kx線と,このx線と関連する数本のγ線を観測することができた.そして,新核種^<241>Bkの半減期を4.6±0.4分として決定することができた.この研究発表は,雑誌論文のIdentification of the new isotope ^<241>Bk, Eur. Phys. J. A 16,17-19(2003)で行なった.
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