ダイヤモンド素材には可能性として、高分解能、低雑音、高速、耐放射線性、高温環境下での使用という性能が期待される。また、近年の製造技術の進歩により天然のダイヤモンドより高純度の人工ダイヤモンドが得られるようになっており、価格的にも安価になることが期待される。さらに、CVDによる大面積の単結晶ダイヤモンドの開発が進んでいるという話も聞かれており今後に更なる期待がなされそうである。本研究では、安価な多結晶ダイヤモンドを使って検出器を開発する前にダイヤモンドの素材自体の検出器としての可館性を調べることを主な目的として単結晶人工ダイヤモンドを用いた検出器の研究を続けている。本年度の補助金では、すべて人工ダイヤモンド素材を購入した。 昨年も報告したが、ダイヤモンドと金属間でオーミックな接触を得ることにより、これまでダイヤモンドを使った検出器で問題になってきたポーラリゼーション効果が起きないようにできる。その方法として、オーミック接触を必要とする電極側の構造としてDLC(Diamond Like Carbon)と水素終端の組み合わせを行うことが有効であるとの結果を得ている。 今年度の夏と冬に放射線総合医学研究所の重粒子イオン加速器HIMACにて、製作したダイヤモンド検出器の試験を行い、Feの入射に対しても検出器の有感領域では、ポーラリゼーション効果が起きないことが再確認された。オーミック接触の解決によるポーラリザーション効果の回避と大面積の単結晶ダイヤモンド素材の可能性により電極をストリップ状に形成した位置検出器を製作できる可能性が広がってきたことを示すものと考えられる。 これまで、単結晶のダイヤモンドは共有結合により耐食性が優れていると考えて同じダイヤモンド素材を再利用して検出器の製作を行ってきた。しかし、一部の製作した検出器に対して入射エネルギーより低い波高の信号が観察されるようになり、現在その原因について調査を続けている。
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