研究概要 |
ノーベリウム257のアルファ崩壊に伴って放出される内部転換電子をアルファ線・内部転換電子同時計数測定により初めて観測した。ノーベリウム257は日本原子力研究所タンデム加速器を用いて合成し、オンライン同位体分離装置を用いてイオン化・質量分離したのち、アルファ線と電子線を4台のシリコン検出器で測定した。観測された電子のエネルギーから娘核フェルミウム253の励起準位のエネルギーを初めて実験的に明らかにし、これまで基底状態と思われていた準位が励起準位であることを明らかにした。また内部転換係数から遷移の多重極度を決定し、励起準位のスピン・パリティを決定した。同時にアルファ遷移の抑止係数より親核ノーベリウム257の基底状態のスピン・パリティを決定した。この結果からノーベリウム257の基底状態のニールソン軌道への中性子配位が3/2[622]であることが判り、中性子数が同じフェルミウム255やカリホルニウム253とは異なる配位を取ることが明らかになった。 来年度はノーベリウム257の親核に当たるラザホージウム261のガンマ線を測定し、ノーベリウム257の励起準位の構造を明らかにするとともに、ラザホージウム261の基底状態のスピン・パリティ,中性子軌道配位を決定する。そのためのアルファ線・ガンマ線同時計数測定装置を今年度製作した。なお本研究で対象としたノーベリウム257は準位のスピン・パリティが実験的に決定された最も重い原子核であり、本研究の成果は超重元素領域の核構造議論に確かな実験的基盤と制約を与えると期待される。
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