研究概要 |
本研究目的の第一は,一般相対性理論の数値シミュレーションを行う際の,Einstein方程式の最適な定式化を与える数学的な原理を提供することである.これまでに世界各地で試行錯誤的に行われていた研究に対して,我々は,すべての試みを統一的に理解する原理を提案している.我々のアイデアは,時間発展と共に,系が漸近的に拘束面に収束してゆくような定式化を行うことであり,本年度,具体的な提案をいくつか発表した.我々の研究は,世界的な注目を集めており,この問題に対するレビュー(英文50ページ)の執筆依頼・国際会議での招待講演・海外研究機関への招牌(3度)にも応じた.現在の研究は,大規模並列計算を用いたテスト段階にあり,我々は独自に並列計算機環境を整え,数値計算を実行中である.また,世界の数グループを組織して共同テスト研究としても進行中である.今後は,さらに数学的な背景(発展方程式の双曲性問題,満たされるべき拘束条件式の時間発展解析,初期値境界値問題としての問題設定など)を援用して統一的に理解し,より一般的・汎用的な数値計算コードを用いて実証することへと研究を進める. また,一般相対論が描く特異なダイナミカル現象の抽出として,ワームホール構造の時間発展を明らかにした.エネルギー条件の違いにより,ワームホールがブラックホールや膨張時空へ相転移すること・形成されるブラックホール質量には最小値が存在することなどが初めて示され,この方面の研究にも大きな進展を与えている.ワームホール研究で得られた,時空のヌル方向分解への知見は,今後重力波研究への応用にも活かされると期待される.
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