研究概要 |
本研究を遂行するにあたり、本年度は以下の成果を得た。 1、本研究では、低次元カーボン60(C60)ナノ構造を形成する基板の1つとして高指数シリコンカーバイド(SiC)表面を高温アニールすることにより作成されるnmオーダーの等間隔ステップを持つグラファイト表面(鋸状表面)を用いる。昨年度は、ステップ間隔がμmオーダーの,鋸状グラファィト表面の作成方法を確立したが、この間隔では一・二次元C60ナノ構造の形成は不可能である。そこで本年度はアニール温度に依存した表面形状の詳細な観測を走査トンネル顕微鏡(STM)で行うことにより、ステップ間隔が100nm程度の鋸状グラファイト表面の作成に成功した。 2、上記試料表面にC60を数分子層蒸着し、STMで観測した結果、C60が基板形状を保ったまま三次元成長していることを確認した。この結果は、100nm程度のステップ間隔を有する鋸状グラファイト表面を用いることによる一・二次元C60ナノ構造の形成の可能性を示唆する。 3、一次元C60ナノ構造を形成する可能性を有する基板として、1原子層(ML)以下の金属原子をシリコン(Si)表面上に吸着することによって形成する一次元金属鎖がある。本年度は,Si(111)表面上にカルシウム(Ca)を1/6MLと0.5ML吸着することによって形成するCa/Si(111)-(3×1)表面とCa/Si(111)-(2×1)表面の電子状態を角度分解光電子分光により測定した。その結果、これらの表面が一次元C60ナノ構造を作成する基板として有効であることがわかった。
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