超巨大磁気抵抗(CMR)がペロブスカイト型Mn酸化物で観測されて以来、ハーフメタリックな電子状態を利用したスピンデバイス応用のために様々な物質が研究されているが、最近、Fe系二重ペロブスカイトSr_2FeMoO_6が大きなトンネル磁気抵抗(TMR)を室温で示し、またバンド計算ではハーフメタルとなることが明らかとなった。このため、Mn酸化物と比較した基礎・応用研究が展開されはじめた。本研究の目的はこの二重ペロブスカイト型酸化物の電子状態を電子分光によって明らかにすることにある。 本年度は、Sr_2FeMoO_6および金属絶縁体転移を示す(Sr_<1-y>Ca_y)_2FeReO_6の電子状態を光電子分光法により研究した。実験は高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・放射光研究施設の軟X線ビームラインBL-11Dにおいて行った。入射光エネルギーは60〜200eV程度で、測定温度は20K〜200K、エネルギー分解能は60-80meVである。その結果、Sr_2FeMoO_6については、ハーフメタリックな二重ペロブスカイト系に特有と考えられるダブルピーク構造をフェルミ準位近傍の光電子スペクトルに見出し、またイオン化断面積を変化させることでその最初のピークがダウンスピンバンドのみからなることを実験的に示した。一方(Sr_<1-y>Ca_y)_2FeReO_6については、上記のダブルピーク構造のうちフェルミ準位に近いもののスペクトル強度が抑えられていることを見出した。さらに低温の電子状態がy〜0.5付近で金属から絶縁体に転移することを観測し、y=1.0の試料については降温に従って140K付近で金属絶縁体転移を観測した。
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