研究概要 |
1.装置の調整 電子顕微鏡および周辺装置の調整を行い,電子チャンネリング図形を取得可能にした.予備実験でもちいてきた試料から電子チャンネリング図形を撮影し,適切なデータが得られることを確認した.来年度はデータのS/Nの向上のためにデータ取得法および解析法の改良を行う. 2.種々の準結晶の解析 (1)水焼き入れ法で作製したAl_<72>Ni_<20>Co_8,Al_<70>Ni_<18>Co_<12>デカゴナル準結晶および,液体急冷法で作製したAl_<70>Ni_<15>Fe_<15>デカゴナル準結晶の電子チャンネリング図形を撮影し,いずれの準結晶においても2種類の遷移金属は同じ原子サイトを占有(ケミカルディスオーダー)していることを明らかにした.この結果はこれらの準結晶がHume-Rothery則に従う電子化合物として安定化していることと符合する. (2)ブリッジマン法で作製したAl_<66>Cu_<17>Co_<17>デカゴナル準結晶の電子チャンネリング図形を撮影し,Cu/Co間のケミカルオーダーの存在を明らかにした.理論計算からAl-Cu-Co系ではCu-Co結合が選択的に作られ,その向きを合わせるように長距離準周期秩序を形成することが予測されているが,本研究の結果はその理論計算を支持する. 3.シミュレーションプログラムの開発 これまで開発してきた準結晶の電子回折の動力学計算プログラムを改良し,電子チャンネリング図形の計算を可能にした.本研究手法の第一人者であるRossouw博士が来日した際にシミュレーションについて討議し,本プログラムの問題点がいくつか判明した.来年度にはそれらを修正し、実験図形をよりよく再現できるものを目指す. 4.国際会議での成果発表 第19回国際結晶学連合会議(IUCr19,Geneva)および第8回準結晶国際会議(ICQ8,Bangalore)に参加し,Al_<70>Ni_<18>Co_<12>のケミカルオーダーに関する研究発表を行った.
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