研究概要 |
本年度は研究目的に最適な試料の探索を目的として、主に、ペロブスカイト型強磁性酸化物であるLaMn_<0.5>Co_<0.5>O_3、LaMn_<0.5>Ni_<0.5>O_3、LaCo_<0.5>Ni_<0.5>O_3多結晶試料の合成および物性測定を行った。その結果、LaMn_<0.5>Ni_<0.5>O_3ではMnとNi源子がほぼ完全に長距離秩序配列し、LaCo_<0.5>Ni_<0.5>O_3ではCoとNi源子がほぼ完全に無秩序配列するのに対して、LaMn_<0.5>Co_<0.5>O_3ではMnとCo原子の秩序無秩序相転移が1400K付近で起こることを明らかにした。さらに、LaMn_<0.5>Co_<0.5>O_3におけるMn/Co原子再配列運動の緩和時間を温度を変えて調査し、その結果、緩和時間は1400K付近で10時間程度になることを明らかにした。したがって、LaMn_<0.5>Co_<0.5>O_3は、Mn/Co配列の長距離および短距離の秩序度を1400K付近の熱処理により制御することが可能であり、本研究の目的に最適な試料であると結論した。現在LaMn_<0.5>Co_<0.5>O_3の物性測定を行っている。 一方、(La,Sr)CoO_3結晶は強磁性を示すが、そのグラス的な磁気的性質からLaとSr原子が不均一に配列していることが従来から指摘されている。しかしながら本研究ではグラス的な磁気的挙動は室温以下の低温においてのみ現れ、相転移温度付近では典型的な長距離強磁性体の振る舞いを示すことを明らかにした。LaとSr原子の拡散は室温付近以下では通常不可能であるため、低温で現れるグラス的な磁気的挙動の起源はCo原子のスピンクロスオーバー現象と関連していることを提案し、LaとSr源子の不均一配列に対して疑問を投げかけた。
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