研究概要 |
本研究の目的はMgB_2と同じAlB_2型構造を持つhigh-T_c物質を探索することである。本年度においては特にAlB_2構造を持つLa_2PdGe_3に注目した。この物質はT_c=3.8Kの超伝導体として最近報告されたY_2PdGe_3と同じ構造を持つ。今回、この物質もまたT_c=3.8Kの超伝導体であることを確認した。この超伝導体の遷移金属サイト、Geサイトに元素置換を行うことで、キャリアドープ、化学的圧力を施しT_cの上昇を試みた。Geサイトの置換に関してはY系と同様、元素質量にではなく、Geサイトの平均イオン半径とT_cが強く相関していることを見出した。これはGeサイトの大きさがが変わることによってa軸長が変化しフェルミ面近傍の状態密度が変化することによってT_cが変化したものと考えられる。また、Pdサイトを周期律表でPdに近い元素Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Ag, Ptで置換する実験を行った。Ptで置換したサンプルのみがT_c〜2Kを示した。つまり、伝導電子数が少しでも変わると超伝導性が失われフェルミレベル近傍の状態密度のピークが非常にシャープであることに対応していると思われる。また、伝導電子数を変えないと思われるNi置換における超伝導性の消失はこの物質が磁性不純物に対して弱い通常のBCS超伝導体であることを示唆していると考えられる。 また、AlB_2構造ではないが、MgB_2同様、軽元素から構成され逆フローライトと呼ばれる物質群Mg_2M (M=Si,Sn,Ge)においても超伝導探索を行ったが、1.8Kまでの範囲においては超伝導は確認されなかった。
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