研究概要 |
本研究の目的はMgB_2と同じAlB_2型構造を持うhigh-T_c物質を探索することであるが本年度においてはAlB_2型MgB_2と同様、軽元素Mg,Cを含む超伝導体MgCNi_3の研究を行った。具体的には転移温度を向上させる事と、特に重点をおいたのは本系の超伝導の強磁性との関連を明らかにする事である。 MgCNi_3はT_c=約8Kの超伝導体である。この物質の注目する点は構造中に強磁性Niを多く含む事、構造的に強磁性Niと類似している点である。この事は本系の超伝導発現機構が強磁性と関連性があると予測でき、本系の超伝導がエキゾチックなものである可能性がある。 以上を踏まえ、本研究では化学圧力をかけることや伝導電子数を変える事により電子状態を変化させ、超伝導転移温度の変化を調べる事、および強磁性出現の有無を検証した。化学圧力印加の方法はMgサイトにZn(加圧),Cd(負圧)を置換することで行った。伝導電子数はCを欠損させることで少なくすることができる。 超伝導はZn,Cd量、C欠損量が増すにつれて消失していくことがわかった。またC欠損量が0.35を超えると強磁性が出現することもわかった。強磁性出現とZn,Cdドープ量との明確な相関は見られなかった。又、強磁性を示す試料においてμSR測定を行い、この強磁性が不純物などではない本質的なものであることが示唆された。現在の組成の刻み幅、測定温度範囲からではこの強磁性相と超伝導相が隣接しているのか、共存しているのか等は明確ではないものの、この結果は本系の超伝導が強磁性相関に由来していることを示唆しており、より詳細な測定が望まれる。
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