研究概要 |
*YbXCu_4の高圧下物性測定 YbInCu_4は常圧下約40Kにて価数転移を示す物質であるが、その転移は圧力によって抑制されることがわかっている。私はこの物質の高圧下安定相の基底状態を調べるため、圧力発生装置(圧力セル)中に電気抵抗用4端子プローブと交流磁化測定用の1次,2次コイルをセットし、これらの測定を2GPa以上の圧力下において行った。試料はLos Alamos国立研究所より提供された単結晶試料である。その結果、約2.4GPa付近で価数転移は低温まで完全に抑制され、代わりに強磁性磁気秩序が出現することを発見した(Phys. Rev. Bに投稿中)。Yb系化合物の価数遥動⇔磁気秩序の転移は5GPa以上の非常に高い圧力下においては報告があるが、この様な低い圧力下で観測された例は今回が初めてである,現在、高圧下での電子状態を微視的な観測手段によって調べるため、高圧下NQR(核四重極共鳴)測定が進行中である。また、常圧下の電子比熱係数がYbInCu_4よりも大きいYbAgCu_4についても高圧下測定を行っているところである。 *V_2O_3の高圧下NMR測定 V_2O_3は常圧下約170Kにて金属-絶縁体転移を示す物質であるが、その転移は圧力によって抑制されることがわかっている。この物質の低温での圧力誘起金属状態は軌道の揺らぎ等の観点から非常に興味が持たれているが、実験的な難しさからこれまでに詳しい研究は為されていない、NMR(核磁気共鳴)測定もその例外ではなく、2GPa以上の高圧発生に加えて、純良な単結晶試料を用いること、さらに精密に角度を制御することの必要性がこれまでの研究からわかっている。現在までに上述の技術的な困難を克服し、非常に信号強度が強いNMR信号の観測に成功した。この信号強度は、角度制御なしでは金属表面における電磁波の減衰(表皮効果)のために微弱になる場合の100倍以上に相当する。現在は静的な情報を与えるスベクトル測定や動的な情報を与える緩和の測定を行っている。
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