磁性金属のコヒーレンス:電子線リソグラフ法を用いた微細加工によって、強磁性金属であるニッケルおよびパーマロイのリング構造の試料を作成し、その特性を調べた。磁気抵抗の磁場依存性に再現性のある磁気抵抗振動を観測した。コヒーレンス長は数十ナノメートル程度と予想されたので、今年度は、試料が50ナノメートル程度の大きさの構造で実験を行った。試料は線幅50nmで、四端子測定の電圧端子間の距離が70nm程度の非常に微細な構造の試料である。これまでにこれほど小さな構造の金属細線試料の測定は例がない。極低温の磁気抵抗を測定したところ、やはり、磁場に対する周期の短い振動成分と、長い振動成分があることを観測した。測定に用いた希釈冷凍機が異なるために温度の安定度から、直接の比較はできないが、磁場に対する短い周期の振動が以前のものに比べ大きく観測された。短周期振動の原因のひとつの可能性は、UCFであると考えられる。 非平衡準粒子伝導:微小超伝導体中の非平衡準粒子の関連して電荷インバランスの余剰電流を明確に観測することに成功した。電子線リソグラフィーにより形成したアルミニウムの細線に金のトンネル接合をふかした素子を作成した。極低温でのV-I特性測定から電荷インバランスの余剰電流の特性を明らかにした。また、余剰電流の大きさに関して解析を行い、準粒子の電荷インバランスは、超伝導体中を拡散的に伝達し、その緩和時間がAlの場合、極低温でおよそ8nsecであることがわかった。この値は、電子フォノン相互作用パラメータから期待される値である。
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