本研究申請準備段階で見出したNiFeリングの磁気抵抗振動現象の起源を探るため、電子線リソグラフィーで作成したNiFeナノリングにおける極低温度(30mK)の磁気抵抗の磁場方向依存性を調べた。その結果、磁場方向による振動周期の系統的変調を見出し、この振動が強磁性体ではじめてのアハロノフボーム効果である証拠を得た(APLに発表)。更に量子干渉効果における磁気構造の影響を調べるために、積極的に磁壁を導入したNiFeの極低温度磁気抵抗振動を調べた。この結果、100nm程度の幅の磁壁による磁気変調構造を導入しても電子のコヒーレンスは殆ど保たれることが明らかになった。これは、Sternらによって予想されていた磁気変調構造における量子断熱条件が不十分であることを示しており、NiFeナノ構造によって伝導電子のコヒーレンスを壊すことなく量子伝導と磁気構造の関係を調べることが可能であることが明らかになった。更に、ナノ構造を用いた磁気構造制御性を探るため、メゾスコピックスケールでの磁気フラストレートが期待できるハニカム構造を有するNiFe細線ネットワークを作製し、磁気顕微鏡(MFM)観察及び輸送物性測定を行った。その結果、このネットワークの磁化過程が磁気的ice ruleに従うことがわかり、フラストレートした磁気構造と量子伝導現象との関係を調べる上でナノネットワーク構造が有為であることを示した。
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