本研究では、格子歪みを伴わない反強四極子(AFQ)秩序を示す典型例であるCeB_6に、共鳴X線散乱(RXS)手法を適用することにより、秩序化した軌道の波動関数を定量的に決定することを目的としている。そのために本年度は、次の3点の実験環境の向上を計った。 1.テンソルの定量化に必須であるアジマス角依存性の測定ができかつ、CeB_6のAFQ秩序の転移点(T_Q〜3.2K)以下の温度に到達できるクライオスタットを作製した。 2.1で開発したクライオスタット中で試料に磁場を印加するため、強力な磁石であるネオマックスにより磁場を印加する手法を開発した。この方法では、磁石や試料の加工が多少必要となるが、散乱強度のアジマス角依存性の観測が比較的容易に可能となるのがポイントである。 3.今回の研究の1つの柱は、超格子反射・蛍光X線散乱・基本反射強度のアジマス角依存性を用いた原子散乱因子テンソルの定量化手法である。しかしながら、微弱な信号であることもあり1つ1つの情報を別々に測定しているのでは、厖大な実験時間が必要となる。そこで、超格子反射や基本反射強度のアジマス角依存性の測定と蛍光X線強度のアジマス角依存性の同時測定を目指すために、新たにX線検出器を一通り揃えた。
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