研究概要 |
相対論的バンド計算の手法を用いて、AnTGa_5(An=Np,Pu;T=Co,Rh,Ir,Ni,Fe)のエネルギーバンドとフェルミ面構造を明らかにした。また、昨年、j-j結合描像に基づいてf-電子系に対する微視的模型を構築する一般的な方法を開発したが、その方法を用いてウラン化合物の微視的模型を構成した。具体的には、UGa_3およびUTGa_5(T=Ni,Pt)に対して、j-j結合描像に基づくΓ_8軌道縮退ハバードモデルが有効模型となることを示し、このモデルを詳細に解析することによって、UGa_3やUTGa_5のスピンおよび軌道構造を明らかにした。また、強磁性相における超伝導対波動関数を昨年開発した対相関最適化法によって解析し、UPt_3のように反転中心が格子点上にない非ブラベ格子の場合に、フント結合による奇パリティスピン三重項対が現れることを示した。さらに、Γ_8軌道縮退ハバードモデルをグリーン関数法に基づく揺らぎ交換近似法によって解析し、軌道およびスピン揺らぎの動的絡み合いと超伝導発現との関連を詳細に調べた。その結果、結晶場の影響で軌道縮退が解けると、軌道揺らぎが抑制されることによって反強磁性スピン揺らぎが顕在化し、d-波超伝導状態が現れるという概念を確立した。
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