今年度のもっとも大きな成果はUIrにおいて圧力下で強磁性と共存する超伝導を発見したことである。UIrは前年度に残留抵抗比が200を超える純良単結晶育成に成功したもので、これは単斜晶の結晶構造をもち、常圧ではキュリー温度46Kの[10-1]方向を容易軸とする強磁性体である。UIrは加圧とともにキュリー温度が減少して約1.7GPaで強磁性転移がみられなくなる。しかし、さらに加圧を続けると1.95Kで新たな磁性相が出現することが、電気抵抗、磁化率測定から明らかになった。この磁性相は磁化率測定結果から小さなモーメントを持つ容易軸が第1の強磁性相と同じ[10-1]の強磁性であり、その転移は2.6GPaで消失する。この2.6GPa近傍のわずかな圧力領域で超伝導が観測された。強磁性体で超伝導が共存しているものとしてはこれまでにUGe_2やURhGeが発見されてきたがUIrはこれらと異なり、結晶構造に反転対称性をもたない初めての強磁性超伝導体であり、その超伝導メカニズムの解明は超伝導に磁性がどのように寄与するのかという点で大変興味深いものである。2.61GPaにおける超伝導転移温度は約0.14Kで、電気抵抗は0.2〜10Kの温度域で非フェルミ液体的なρ(T)=AT^<1.6>+ρ_0の挙動を示した。これはUIrの超伝導が第2の弱い強磁住転移の消失による磁気揺らぎと関係することを示すものである。
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