研究課題
前年度までの研究では、キュリー温度46K、磁化容易軸[101]のイジング型強磁性体Ulrの純良単結晶を育成し、加圧とともにキュリー温度が減少し1.7GPaで転移が見られなくなり、さらに加圧を続けると新たな強磁性相が出現することを電気抵抗、磁化測定から明らかにした。この強磁性相も加圧によりキュリー温度が減少し、この相が消失する2.6GPaの圧力下において転移温度0.14Kで超伝導に転移することを見出した。今年度は、1.7GPa以上の一つの強磁性相だと考えていたものが2.1GPaで2つの異なる磁気秩序相に分かれることを明らかにした。この2つの相は1.7GPa以下の強磁性相と同様に[101]を容易軸とする強磁性相である。J//[010]の電気抵抗測定ではこのうち1.7〜2.1GPaの中間圧相において残留抵抗が他の2相の約10倍にまで増大することが明らかになった。この残留抵抗の増大は容易軸J//[101]では見られず、この相が異方的な伝導特性を持っていることがわかった。また多結晶粉末X線回折の実験結果によるとこの3つの相では顕著な結晶構造の変化が見られず、高圧相の消失する2.6GPa近傍で見られる超伝導がやはり反転対称性を持たない結晶構造中で出現していることが確実となり、その超伝導のメカニズムが興味深い。さらに交流帯磁率測定により、超伝導状態におけるマイスナー効果の観測にも成功した。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 272-276
ページ: supplement 1, E171-E172
Journal of the Physical Society of Japan 73
ページ: 3129-3134