超ナローギャップ有機半導体が持つ新しい電子機能

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14740223
• 研究機関: 独立行政法人理化学研究所
• 研究代表者: 田嶋 尚也 独立行政法人理化学研究所, 分子物性化学研究室, 研究員 (40316930)
• キーワード: 有機伝導体 / ナローギャップ半導体 / 高圧力 / 磁気抵抗 / ホール効果

研究概要

本研究では、我々が見つけた「新しい型の電気伝導体(超ナローギャップ半導体)」の特異な輸送現象を解明することが目的である。室温から1.5Kまで約6桁ほど強く温度変化する担体濃度と易動度とが相殺して温度に依存しない電気伝導度を示すことが特徴である。これは有機・無機物質含めて今までに例がない新しい電気伝導現象である。しかし、なぜ6桁にもおよぶ担体濃度と易動度とが低温まで相殺するのか未だ明らかでない。
昨年度、ヘリウム3を使用して0.5Kまで温度域を拡張し、15T以下の磁場中、25kbar(2.5GPa)以下の高圧下における電磁伝導(磁気抵抗、ホール効果)測定システムを構築し、超ナローギャップ有機半導体を最初に見つけた物質であるα-(BEDT-TTF)_2I_3の担体特性を極低温域で調べた。
今年度は測定対象物質をθ-(BEDT-TTF)_2I_3,α-(BEDT-STF)_2I_3,α-(BETS)_2I_3,までひろげ、ナローギャップ有機半導体のユニバーサルな担体特性を見出すことを目的とした。その結果、どの物質もα-(BEDT-TTF)_2I_3と同じ特徴的な異常磁気抵抗、ホール効果を示し、フェルミエネルギー極近傍に軽い有効質量をもつエネルギーバンドと、フラットなエネルギーバンドが存在するこが判明した。
特に今年度着目したのは、その中の1つであるα-(BEDT-STF)_2I_3が低温で非常に高い易動度をもつという事実である。この物質は左右非対称の構造をしたBEDT-STF分子から構成され、左右の位置がランダムにα型に配列している。したがってこの物質は乱れの効果を十分に含んでいるはずである。ところが、驚いたことに、低温で三非常に高い易動度をもつことが判明した。低温の高い易動度の適否については、磁場中の電位分布・電流経路を調べ、確かにこの物質は低温で非常に高い易動度をもつ。

研究成果

• [文献書誌] K.Kajita, N.Tajima, et al.: "Organic Semiconductor with Extremle Narrow Energy Gap"Synthetic Metals. 133. 95 (2003)
• [文献書誌] N.Tajima, et al.: "Transport Properties of Organic Conductor α-(BEDT-TTF)_2I_3 and θ-(BEDT-TTF)_2I_3 under Hydrostatic Pressure and Uniaxial Strain"Synthetic Metals. 133. 147 (2003)
• [文献書誌] T.Imakubo, N.Tajima, et al.: "Supuramolecular Organic Conductor θ-(DIETS)_2[Au(CN)_4] --- Unique Cristal Structure and Superconductivity under Uniaxial Strain"Synthetic Metals. 133. 181 (2003)
• [文献書誌] M.Fujiwara, N.Tajima, et al.: "New Te-based Counter Anions for Conducting Cation Radical Salts --- Tetraiodotellurate(II) and Hexaiododitellurate(II)"Synthetic Metals. 133. 459 (2003)
• [文献書誌] R.Kato, N.Tajima, et al.: "Superconductivity Induced by Uniaxial Strain in the Pd(dmit)_2 System"Synthetic Metals. 137. 1233 (2003)
• [文献書誌] N.Tajima, et al.: "Effects of Uniaxial Strain on Transport Property of a Supramolecular Organic Conductor θ-(DLETS)_2[Au(CN)_4]"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 1014 (2003)