本年度は河川の流路形態の変化を示すモデリングを主題とした。この現象の精密なモデル化に成功すれば、物質移動にょる境界の動的変化を伴う流体現象を解析する基礎モデルとなる。なぜなら、風紋・海流砂礫移動に伴う海岸線の移動などの物質移動を伴う地形形成現象に対して直接応用が可能となるばかりか、河川の動力学において重要な役割を担っている物理過程に個々特別な過程を追加する形で多様なパターン形成現象に対応可能となるからである。例えば、化学反応ダイナミクスを導入すれば、鍾乳石形成などの現象に対しても同様なモデル化が可能となる。この様な理由から、第一に物質移動を伴う流体系の雛型である河川流路形態遷移現象のモデル化を行った。 蛇行流から網状流へと遷移を再現するモデルの構築を行った。具体的には水深方向に平均化した速度場のダイナミクス(2次元Navier-Stokes方程式)と流れに伴う侵食・堆積の現象論的ダイナミクスを結合させたモデルを導入した。このモデルをベースとした数値実験を行い、単一のモデルで川底の傾斜の増大に伴い直線-蛇行-網状という河川の典型的な三形態を再現する事に成功した。このモデリングにより網状流の形成には掃流と浮遊流との比率が重要な役割を担うことが明らかになった。土砂流動の主要因が掃流である場合には網状化が推進され、浮遊土砂が主要因であれば蛇行流路が形成される事を明らかにした。 このモデルを元にした蛇行形成過程の物理的機構や蛇行のオーダーパラメータ(秩序変数)・無次元パラメータを明らかにするべく大規模シミュレーションを行った。これらの研究成果を日本物理学会や京大数理解析研究所研究会、同基礎物理学研究所等において発表した。
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