厳密に解ける1次元の模型として、本年度はハイゼンベルグXXX模型とハバード模型を中心に研究を進めた。 まず、ハイゼンベルグXXX模型に関しては、最近高橋によって得られた熱力学を記述する新しい積分方程式を考察し、この方程式が熱力学諸量の高温展開に非常に有効であることを見出した。実際、我々は、比熱と帯磁率に関して、この積分方程式を用いてJ/Tに関して100次のオーダーまで高温展開を計算することに成功した。従来の連結クラスター法による展開では24次までしか計算されていなかったことを考えると、これは格段の進歩である。また、得られた高温展開とパデ近似を組み合わせることによって、十分低温の領域まできわめて高精度な物理量の計算が可能になった。 また、ハイゼンベルグXXX模型に関しては基底状態での相関関数の厳密な計算にもいくつか成功した。基底状態の相関関数に関しては、従来、神保らによる多重積分表示が知られたが、最近この多重積分が実際に計算できることが明らかになってきた。特に、我々はスピンがあるnサイトにわたって上を向いている確率P(n)(Emptiness Formation Probability)に注目し、n=5までのP(n)を積分表示から解析的に計算することに成功した。得られた表式にはゼータ関数の特殊値が現れるなど、数学的にも非常に興味深い。また、密度行列繰り込み群を用いてP(n)を数値的に計算し、nが大きいところではP(n)はガウシアン的に減衰することを見た。1次元ハバード模型に関しては、量子転送行列法を用いてハーフフィリングでの1粒子グリーン関数の有限温度における相関距離を計算した。とくに温度T⇒0では相関距離はスタフォード-ミリスの予想値に近づくことを確認した。この結果はギャップと相関距離との関係を議論する上で非常に重要である。
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