今年度は、古典系に対する研究として、非平衡状態での仕事から平衡状態間の自由エネルギー差を計算するJarzynski等式の統計力学的対象である多自由度系への適用を調べた。具体的には、Lennard-Jones粒子系に対して適応し、Jazynski等式を用いた非平衡状態での仕事から平衡状態を調べる方法:非平衡仕事法の、多体系に対する有効点、問題点等が明らかになった。この成果は2月にジョージア大学で行われたシミュレーションを用いた凝縮系の研究に関するワークショップで報告した。さらに、3月に行われる日本物理学会でも成果の発表を行う。また、相転移の非平衡ダイナミクスに関する研究成果も共同で調べ、現在出版が決定している。 さらに非線形動力学系への熱力学の拡張に関連して、申請者が長年研究を行っている交通流系に対し研究を行った。昨年度は実際の高速道路上の交通流のデータの整理、解析をおこない、熱力学的な特徴を取り出そうと試みたが、データの量が膨大なため積極的な成果が得られなかった。今年度は、その点をふまえ、理想的な交通流状態の実験的な再現を行い、自発的な渋滞非渋滞相転移を世界で初めて実験的にとらえた。この実験の一部は、フジテレビ系情報番組「交通バラエティ日本の歩き方」で2003年10月13日(関東エリア)に放送されている。データの読み取り等の作業を現在行っており、投稿論文を準備している。
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