研究概要 |
乱れのあるジョセフソン接合の配列した系の超伝導位相のダイナミクスを計算機シミュレーションの方法で調べた。まず,系を超伝導位相に関する多自由度を持ったネットワークとみなし,その位相の時間発展ダイナミクスを拡張したresistively shunted junction(RSJ)モデルで記述し,新たな理論モデルを構築した。そして分子動力学的アルゴリズムを応用した計算機シミュレーション技法によってネットワークの回路特性等を解析した。 具体的には,2次元的なジョセフソン接合ネットワークに着目し,その電気的特性を主に直流駆動電流に対する応答という点から明らかにした。特に駆動電流を供給した時にネットワーク両端に生じる電位差を解析した。そして有限の電位差の発生する臨界電流強度とvortex格子の塑性-弾性流動状態間の臨界電流強度の両方について,ネットワークの乱れ強度に対する変化を調べた結果,低次元伝導体等における電荷密度波のピン止めのスケーリング則に類似の振る舞いが確認できた。そしてネットワークの位相ダイナミクスに関する特性はジョセフソン接合配列および内在する乱れと位相の非線形ダイナミクスが影響し合った結果生じる協力現象であり,さらに多自由度系の非線形ダイナミクスの視点から理解できることも明らかになった。また,ジョセフソン接合臨界電流強度の分布などを取り入れ,電流-電位差特性をもとに線形抵抗率とその温度変化などを調べ,カイラルグラス状態等の同定やその性質の解明を行う準備をすすめている。 なおシミュレーションのための計算環境として,複数の計算機による並列計算等が行えるように計算機システムを構築した。そして一部の大規模なシミュレーションの実行には,全国の共同利用施設における大型並列計算機も併せて利用した。
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