生体2重膜の物性に対する体系的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14740236
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 野々村 真規子 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20333320)
• キーワード: ロッド・コイル共重合体 / 2重膜 / ジャイロイド構造

研究概要

生体2重膜の物性を研究するには、分子動力学で扱える系より大きな系での挙動を知る必要がある。そこで濃度場を動的変数としたモデル方程式によって二重膜を取り扱うことを考えて研究を進めている。本年度はこのことに関係した研究をいくつか行った。
まず一つ目として、昨年度に引き続き、コイル・コイルブロック共重合体等のミクロ相分離を表すモデル方程式にブロックの剛直性をとりいれたロッド・コイル共重合体の研究を行った。これはコイル・コイル共重合体のモデルを用いた場合、容易には2重膜が形成されないことから始めた研究である。コイル・コイル共重合体とは異なるミクロ相分離構造はもちろんのこと、コイル-ロッド転移でのダイナミクスや電場などの外力の影響も詳しく調べた。
また、生体膜でもその形成が報告されているジャイロイド構造に関する研究も行った。ジャイロイド構造は他の構造と平衡周期が異なるため、濃度場を変数とした運動方程式では取り扱いが難しい。そこで、2モード近似により運動方程式から振幅方程式を導出し、それを用いてジャイロイド構造の安定性と構造間の転移キネティクスを調べた。
他にも、粘弾性高分子のネットワークの変形や基板上での溶液蒸発過程でみられるパターン形成などに対するモデルの構築やそのシミュレーションも行った。これらは構造の制御さえできるようになれば、生体膜を接着させるなどして人工組織に利用できる可能性ももつため、本研究課題である生体膜の物性の体系的な理解に必要である。

研究成果

• [文献書誌] N.Yamazaki, M.Motoyama, M.Nonomura, T.Ohta: "Morphology of Micro-Phase Separated Domains in Rod-Coil Copolymer Melts"the Journal of Chemical Physics. (to be published).
• [文献書誌] M.Nonomura, K.Yamada, T.Ohta: "Formation and stability of double gyroid in microphase separated diblock copolymers"J.Phys. : Condens.Matter 15. 15. L423-L430 (2003)
• [文献書誌] T.Nishikawa, M.Nonomura, et al.: "Micropatterns based on Deformation of Viscoelastic Honeycomb Mesh"Langmuir. 19. 6193-6201 (2003)
• [文献書誌] M.Nonomura, R.Kobayashi, Y.Nishiura, M.Shimomura: "Periodic Precipitation during Droplet Evaporation on a Substrate"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2468-2471 (2003)