研究概要 |
当初の計画通り、超臨界流体とこれに関係する研究対象について、分子シミュレーションのためのコンピューター・プログラムの作成とテスト、情報収集を行った。コンピューター・プログラムは次のような作業に用いるためのものをそれぞれ作成した:(1)超臨界流体そのものの一般的な性質を解析する;(2)超臨界流体中での分子合成および分解を研究する;(3)形状が非線形な分子の性質を調べる;(4)密度汎関数法によって流体の電子構造とその変化を調べる。これらのプログラムは主にモンテカルロ法、分子動力学法に基づいており、目的に応じて各種の統計集団についてシミュレーションできるよう考慮し、超臨界流体特有の密度揺らぎをはじめとする様々な物理量を解析できるようにした。例えば(3)のプログラムでは、温度一定の分子動力学シミュレーションを行い、動径分布関数と構造因子の計算、分子の配向秩序の測定、クラスター解析ができるように設計されている。アラニン分子を想定したテスト・シミュレーションの結果は、Cannらの結果(J. Chem. Phys. 113, 2369 (2000))と定性的に一致することが確かめられた。(4)のプログラムは現在テスト中であるが、有機分子についても適用できるようにし、超臨界流体中での合成・分解の研究に利用する予定である。情報収集については、国際会議ではSIXTH LIBLICE CONFERENCE on the Statistical Mechanics of Liquids、国内会議では日本物理学会2002年秋季大会、IBMライフサイエンス・天城セミナーに出席し、コンピューター・シミュレーションの方法論、臨界現象などに関する情報を収集した。また、二次元超臨界流体に関する論文を、雑誌J. Non-cryst. Solidsに発表した。
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