「数値くりこみ法」を2次元非平衡開放系模型(以下「2次元非平衡系」と略)の物理量を計算可能なように一般化する。これが本研究の最終目標である。このような一般化を成功させるためには、まず一般化が成功しているか否かテストするための、厳密解を持つモデルが重要である。 量子スピン系ではAffleck-Kennedy-Lieb-Tasaki(以下AKLTと略記)模型がその一つであった。1次元、2次元以上のそれぞれにおいて厳密な行列積型(以下EMPと略)基底状態解、厳密なテンソル積型(以下ETPと略)基底状態解が知られている模型である。その重要性は、1次元解の構造が「数値くりこみ法」との類似性を持っていたことによる。これ故に2次元以上のETP基底状態解の構成法は、「数値くりこみ法」を2次元以上の量子スピン系へ一般化する際のヒントとなった。 本研究における対象は2次元非平衡系という確率過程模型である(量子スピン系での「基底状態」は、確率過程模型での「定常状態」に相当する)。そこで2次元非平衡系での「AKLT模型」すなわちETP定常状態解を持つ模型の発見ができると良い。しかしこれは簡単ではない。そこで、平成14年度はまず1次元の世界でEMP定常状態解を発見する方法の模索から始めた。得られた結果は、以下の通りである。 従来提案されていた方法で、EMP解が存在するかもしれないmodelパラメタの候補をリストアップする。次に各候補に対し「サイトによらないEMPベクトルの再構成法」を適用してみる。この「再構成法」は、候補が本当にEMP解であったなら、その構成行列を構成できるという方法である。 この「再構成法」の構成が本年の成果である(日本物理学会第58回年次大会講演にて発表予定)。現在はこの方法の一般化および厳密解発見の為の数値計算を行っているところである。 なお、本研究は年度後半から笹本智弘氏(東京工業大学)との共同研究となった。
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