2001年9月に、宮城県沖日本海溝陸側海域において、約40台の海底地震計を設置し、また24チャンネル・ハイドロホン・ストリーマーを用いての海域総合構造調査が行われた。調査は、それぞれが100kmの測線長をもち、5km間隔の日本海溝軸に沿った7本の調査測線上で行われた。本年度は、この測線に沿った地殻構造を求めるために、ハイドロホン・ストリーマーの反射記録を処理し、測線に沿った反射断面図を作った。また、海底地震計の記録に対して、従来から行われているτ-P変換・τ-sumインバージョン法を用いて、海底地震計ごとの1次元P波速度構造を作成し反射断面図とあわせて2次元P波速度構造を求めた。7本ある測線のうち、海溝軸側の2本ではハイドロホン・ストリーマーの記録が、フォーマットの不整合で読めなかったことより、陸側の5本の測線に対して解析を行った。現在は、この問題は解決し、次年度に問題のあった2本の解析を行う予定である。 物性を議論する上で、上述のP波速度構造のみでは不十分であり、S波速度構造は重要な情報となる。海底地震計は3成分の速度型センサーを持っているにもかかわらず、従来は水平動2成分に対する解析は、なかなか行われてこなかった。本研究では、海底地震計の水平動2成分の方向を精密に決定し、これを解析することによって、特に堆積層内のS波速度構造を求める手法を確立した。これによって、深部のS波速度構造に対する議論が可能となる。 3次元構造に対する有限差分法による波形計算を行い、海底地震計の波形記録との比較検討を始めた。特に、プレート境界面での不均質構造について、P波、S波の速度構造を変化させ、それに対応する観測波形の応答を見ることによって、プレート境界面での物性の考察を行った。
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