研究課題
本研究では、2001年8月〜10月に、宮城県沖日本海溝陸側斜面海域で行われた人工地震構造調査で得られたデータについて、プレート境界面の物性を解明する目的で解析を進めている。昨年度までに、プレート境界面におけるP波の反射に関して、その強度と地震活動との間に非常によい逆相関があることを示した。すなわち、反射強度の大きい場所では地震活動が低く、小さい場所では地震活動が大きいという関係が成り立つことを明らかにした。本年度はこれについて、論文にまとめて発表した(Mochizuki et al., JGR,2005)。プレート境界の物性に関して総合的な解釈を行うためには、S波のプレート境界での反射についても明らかにする必要がある。人工地震調査では爆破震源を用いるために、S波は励起されない。そこで、音響基盤におけるPS変換波を用いて解析を行う必要があるが、昨年度まではS波に関して地殻構造内不均質による散乱がノイズ元となり、詳細な解析を行うことが阻まれていた。本年度は反射法調査で記録された人工震源直達波の波形を用いて海底地震計データのデコンボリューションを行い、こうしたノイズ元を低減させることに成功し、明瞭なS波波形記録を得ることができた。それ以前は、S波のプレート境界反射波について反射が見られないと解釈していたが、ノイズを除去した明瞭なデータを解析したときに、必ずしも音響基盤におけるS波の励起が十分ではない可能性があることがわかった。2001年の調査では、海底地震計のデータがまばらなために、さらに詳細な解析を行うことができない。そこで、2002年に2001年の調査海域の南で行われた人工地震調査のデータについて解析をはじめた。この場所についても、P波のプレート境界反射強度と地震活動との逆相関を確認した。S波の反射強度に関する詳細な解析は、今後の重要な課題である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Geophysical Research - Solid Earth 110
ページ: B01302,doi:10.1029/2003JB002892