火山周辺で発生する地震は、火山内部の熱水やマグマなどの流体の動きや火山内部の応力状態の変化を反映している。火山内部で進行する物理現象を理解し噴火予知へ応用するためには、火山で観測される地震波形を詳細に解析し、その震源メカニズムを明らかにする必要がある。火山で発生する地震は伝播経路の影響を受けるため、観測される地震波形から震源メカニズムを得るためには、伝播経路の影響をできるだけ正確に評価しなければならない。本研究では、複雑な火山の地形が地震波形に与える影響を数値シミュレーションにより評価し、火山で発生する地震の震源メカニズムの解析へ応用する。 平成14年度には、理論地震波形を計算するための計算機コードの効率化を進めた。従来の計算機コードでは数値メッシュの間隔を変化させることができないために、計算領域の一部で細かいメッシュが必要なときは計算領域全域で同じ大きさの細かいメッシュを用いなければならず、計算時間と計算に必要なメモリーを増大させていた。改良されたコードでは、数値メッシュの間隔を場所ごとに変化させることができる。このため、細かいメッシュが不必要な領域では粗いメッシュ間隔を用いることができ、計算速度とメモリーを大幅に節約することができる。改良されたコードを用い、三宅島地形に対する数値シミュレーションを実施した。 また、イタリアのストロンボリ火山で得られた広帯域地震波形データと数値シミュレーションによる理論地震波形との比較を行った。地形を考慮して計算された理論地震波形を用いることにより、震源での地震メカニズムが、斜めに傾いた亀裂の開閉で説明できることが明らかになった。
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